天使になれなかった。


「あ…あぁそうだよ。それが、どうかしたかい?」

明らかな作り笑い。
取り繕われた胡散臭い笑顔に吐き気がする。


「これ」


蓮見が親父の目の前にさっきの写真をつきだした。

親父はみるみるうちに青白くなっていく。
ワナワナふるえる手で写真を手に取り血走った目で自分の性欲を見つめている。


あたしは必死でこみ上げてくる笑いをこらえた。


「信用できないなぁー!有名弁護士さんが実は援助交際してたなんてぇ」

蓮見はわざとらしい口調で呟く。

「……わ…わたしをどうしたいんだ!!!」

「それ、よく撮れてるでしょ?」

「頼む!!!黙っていてくれ!!!金ならだす!!金ならだすから!!!」

力がぬけきって蓮見の足にすがりついて懇願する姿に、蓮見は汚物をみるような冷めた瞳でみおろす。

その瞳に親近感のようなものを感じたのは、きっとあたしもあたしの上で喘ぐ親父をこんな瞳でみつめているから。


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