天使になれなかった。
華麗に奪い取った万札の束はまずはハンバーガーになった。


蓮見はあたしの前でハンバーガーを黙々と食べている。


何事もなかったかのように。
いや、何事もなかったんだ。コイツにとって。



「食わないの?」

「……あんた、綺麗な顔してやることグロいね」

「手嶋さんにだけは言われたくないなー」


その言葉に思わず顔が歪んで、心臓がドクンと大きく響いた。

「……知ってるの?あたしが………」

「エンコーやってること?」



スルリと蓮見の口からでた言葉はまるで池に放たれた魚のように激しい勢いと滑らかな流れであたしの耳に進入してきた。

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