天使になれなかった。
「これで、アイツらの情報はこっちのモノだ」
口元を緩めてほくそ笑む姿に寒気がしたのは、言葉の奥に潜む冷めた心に触れてしまったから。
いや、たぶん
共鳴。
「あとは女性の君がコイツらを操ってくれれば完璧なんだ」
「……なんであたしなのよ…」
「白いライオンみたいだから」
即答で返ってきた言葉に返答する言葉が見つからない。
「他とは違う目をひく華麗な姿を操って、群がる獲物を残虐に喰いあらす……そんなヤツを探してた」
エキセントリックな口説き文句。
「俺の情報と君の才能があれば世界は潰せる」
世界を潰す?
呑気な顔して街を歩く他人を?
馬鹿な笑い声しかだせないクラスメイトを?
偉そうな顔してベットの上で飢えたように呻く下種たちを?
殺すような視線をむける義理父と義理母を?
あたしを地球の屑に捨てたまま、さっさと消えた両親を──……?
ぶっ潰す。
「わかった。参戦してあげる」
そのとき、誰にもみせたことのない艶めかしい笑みを浮かべた。
蓮見はそんなあたしを同じように妖艶的な微笑みで見ていた。