天使になれなかった。
「おはよー!!」

「おはよう!!昨日のドラマみたぁ?」

「おーっす!」

朝から元気な声が飛び交う学校へいき、靴箱から上靴をとりだしていると誰かが「おはよー」と声をかけてきた。

あたしに声をかけてくるやつなんてひとりしかいない。

そこには予想通り蓮見がいた。

「あんた……ニュースみた?」

挨拶は返さず通り過ぎる生徒に聞こえないように小声で話をきりだす。

「あぁ…まぁね」

蓮見は欠伸をしながら何でもない様子で答えた。

「写真は返す約束じゃなかった?」
「返すわけねーじゃん。藍チャン怖じ気づいたりしないよな?」

心配そうにあたしの顔をのぞき込む蓮見と顔の距離が近く。
あたしは面倒くさそうな顔で茶色のきれいな瞳から自分の顔を遠ざけた。


「そんなわけないでしょ…てゆうか何でアンタにそんなふうに呼ばれなきゃなんないのよ」

「いいじゃん!俺のことも凛羽って呼んでよ…だって俺たち同志なんだし」

耳元で囁かれた言葉にドキリとした。
決して甘いものとは別のドキリ。

………同志。

「そういえばーあの女の子中学生だったんだって。これは俺も予想外ー。てゆうか英語のプリントって今日退出だっけ?」

そのフワフワした掴み所のない態度にあたしは溜息をついた。


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