天使になれなかった。
いつも通りの授業。
保田の声は雑談にかき消される。
ひときわウルサいのが蓮見……凛羽のグループだった。
金髪やワックスで逆立てて制服をだらしなく着る男子と、短いスカートからたまに下着がみえそうになのに何の恥じらいもなく甲高い声をあげて振る舞う女子の輪のなかに凛羽はいた。
「ぎゃははは!!!」
「マジでー?!?」
「こらっ!そこ静かにしなさい!」
「うっせーんだよ!ブス!」
「ギャハハハ!!!」
あたしは我知らん顔で頬杖をつきながらノートを書き続ける。
凛羽はあれから、あたしに話しかけてくることはなかった。
授業中も、休み時間も目を合わすことすらなかった。
あたしたちは以前通りの距離を保つ。
密かに極秘計画を共有しながら。
誰も気付きはしないだろう。
無愛想で優等生の不思議女子生徒
明るく人気者で人懐っこい男子生徒
なんの接点もないふたりが
世界破滅計画をしているなんて。