天使になれなかった。
放課後、あたしと凛羽はあるオトコを尾行していた。


57歳になる議員で

林 孝夫


奥さんと2人暮らし。
最近テレビやニュースで引っ張りだこの政治会で今もっとも注目されている人物だ。

そいつが今あたしたちの数十メートル先でエスピーに囲まれながら歩いている。

歩き方から自尊心のオーラが漂っていて、胸くそ悪い。

ビルが建ち並ぶ大きな街はクラクションと人の話し声が鳴りやまない。


「コイツを誘えば、いいネタになる。写真は業界に売りつけてもいいし、脅してジワジワ金をむしりとってもいい」

「でもエスピーがいるじゃん。どうやって誘うのよ?」

「これから1人になるよ。女子高生になりすまして予めメールで会う約束をつけておいたから」

その自信ありげな態度からあたしはこれ以上詮索するのをやめた。


凛羽が言うには、大物ばかりが集った出会い系サイトがあるらしい。
忙しさで女性と会う暇のない奴らは此処を利用する。

林議員とあたしはそこで出会ったという設定だ。
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