天使になれなかった。
凛羽の予測通り林議員はエスピーを残し、ひとり足早にどこかへ移動した。
「よしっ…」
凛羽はニヤリとほくそ笑んだ後、あたしの手を引いて人混みに飛び出して議員のあとを追いかける。
あたしは凛羽から事前に聞かされていたデータを頭で処理をする。
林 孝夫
52歳
妻が1人
黙認された愛人が2人
ワイロで媚びるのが得意
行き渡った金は酒に消えているという。
“私が皆さんに住みよい未来をつくります”
いつだったかそんな発言をしたらしい。
反吐がでる。
あたしの未来はいつまでたっても変わらない。
不必要だったのに産み落とされて、抵抗なく捨てられて、存在なく暮らして、死んでいくんだ。
あんたに何ができた?