天使になれなかった。
林議員は古汚い工場のなかに入っていった。

あたしたちも後を追ってなかにはいる。


そこは無人工場。
真っ暗で、鉄の錆びた匂いが充満している。

古びた機械たちは、もう何年使われていないんだろう?

凛羽とあたしは大きな機械の裏に隠れた。

「おい!!私だ!!約束通り1人できたぞ!!」


林議員の叫び声が響く。

「今だ、行って」

凛羽がポンとあたしの背中を押す。

あたしは林議員の前にはじき出された。


「あぁ、君か。待っていたよ。どうも私は忙しくてね、女性と会う機会がなかなかないんだよ。だから君から誘いのメールがきたときは嬉しかったよ」

「……お会いできて光栄です。ずっと貴方にお会いしたかったから」


マニュアル通りの言葉は林議員を上機嫌にさせた。

単純なやつだ。

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