天使になれなかった。


それからすぐに高級ホテルのスイートルームに移動した。

ヨーロッパの宮廷のような部屋は白を基調としてシャンデリアの光が宝石のようにキラキラと散らばっている。


映画でしかみたことのないような世界。
まるでマリーアントワネットのようだ。

「すごい……」

辺りを見回せば思わず感嘆の言葉がもれる。
あたしの肩を抱き寄せながら林議員は得意げに笑った。

「どうだい気に入ってくれたかな?」

自分がどこにいるのかを忘れてしまいそうな広さに目眩がする。



だけどこの純白な世界も、もうすぐ汚れてしまう。


薄汚い肉食獣の手によって。



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