天使になれなかった。
あらかじめ決めていた待ち合わせ場所の無人工場の屋上で凛羽ともう一度おちあう。
錆びれた鉄の階段を駆けあがると一面が空で覆われる。
あたしが到着するとすでに凛羽は錆びて赤茶色に変色した柵からどこか遠くをみながら呆然とした表情で煙草を吸っていた。
それは凛羽を知っている人から見れば違和感のある光景だった。
蓮見 凛羽は常に笑っていてたくさんの人に囲まれていて暗い空気を知らない、そんな存在のはずだから。
「みて、これ!」
あえてそのことには触れず高揚感を露わにした声で厚みのある茶封筒を差し出す。
「おー!すげぇじゃん!」
声をかけると、さっきの重たい表情から一変して普段の天真爛漫さが戻っていた。