天使になれなかった。
「三十万だって。」


そう言って凛羽の隣に座り込む。

「“アレ”は?」

あたしは凛羽の掌に小型の録音機を渡す。

そう。一部始終はすべてこの中におさめられていた。


「それ、どうすんの?」

「どうしよっかなー。自宅に送りつけるか、マスコミに売るか……あ、そうだ、金は全部藍のものだよ」

「え?半額ずつじゃないの?」

「俺はコレさえあればいいからさ!」

そういって凛羽は小型録音機を太陽にかざした。


その横顔は無垢な少年のように目映い光を吸収していたけれど、手に持った煙草の煙がその姿をうっすらと曇らせていた。

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