天使になれなかった。
怠惰に占領された重い身体を転がして仰向けになる。
黒のマーメード型ワンピースが太股のあたりまでめくれた。
凛羽は屋上からみえる眺めを突き刺すような眼差しでみている。
どこか一点だけをみているのだが、それがどこだかは分からない。
きっと凛羽が見ているのは景色じゃないから。
ほら、今取り巻いてる空気は学校での愛らしい蓮見凛羽とは違う。
凛羽は時々こんなふうに誰にも入れない世界に閉じこもる。
喉が焼けるようにヒリヒリした。
「俳優業やるんですかー?」
凛羽を、からかってみる。
喉の熱さを冷ましたくて。
凛羽はさっきまでの怖い顔から柔らかな呆れた顔になった。
「聞いてたのかよ」
「違う。聞こえてきたの。で、どうなのよ?」
「馬鹿言うなよ。一番似合わないって知ってるの君だろ?」
「……ねえ、どうして凛羽は世界を壊したいと思ったの?」
太陽が静かに落下していく。
音は聞こえない。