天使になれなかった。
「……壊れたらいいんだよ。全部。最初からなかったことになればいいんだ」
凛羽はまた厳しい顔つきで遠くをみつめた。
街が夕日に染まっていくのを、ただ黙って見つめる。
胸が痛い。
凛羽は、あたしの質問にはっきりとは答えてくれなかった。
だけど、少し震える声と華奢な背中をみれば分からなくていいと思った。
きっと声に出せば彼は潰されてしまうから。
どこか遠くを見つめて小さくなる凛羽をみると、鼻の奥がツンとした。