天使になれなかった。


あたしは四百万はいった茶封筒を握りしめて、柵の前で立ち上がった。


「凛羽、おもしろいもの見せてあげる!」



「え?」

凛羽は夕日に照らされたあたしを眩しそうに目を細めてみつめた。


あたしが茶封筒から万札を取り出して、躊躇することなく盛大に空へ投げたのは瞬間だったと思う。

当然、金は天へ昇ることなく地上へ墜ちていった。


凛羽はその様子を目を大きくしてポカーンと傍観した。


< 57 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop