天使になれなかった。
act.6
息を潜めて家に帰る。
重たい扉を開けながら此処は家と呼んでいいのだろうか。とどうでもいいこと考えた。
お帰りなさい の声は聞いたことない。
あるのは侮蔑の目と息がつまるような空気だけ。
「…帰ってきたの?…ちょっと来なさい…」
自室にいこうと階段に一段足をかけた瞬間だった。
振り向いた先には青白い顔で意気消沈とした義理母が立っていた。
過去にも何度かある。
こんな姿で義理母があたしを呼びだしたとき、それは義理母の機嫌がすこぶる悪いときだ。
原因は様々で、義理父との喧嘩や華恋の反抗、近所の人に陰口を言われていたとか。
そういう不安や苛立ちを全部あたしにぶつけるのだ。
あたしに拒否権は存在しない。
あたしは階段の一段目に置いていた足をゆっくりおろした。