天使になれなかった。
教室を出て校門をくぐりぬけると、突然の雨が降ってきた。
どんよりした灰色の空から冷たい滴が落ちてきて頬の線をなぞる。
ふと顔をあげると一瞬にして、バケツをひっくり返したほどの量が降り注いできた。
生徒たちが急に慌ただしくなり急ぎ足になりだす。
通り雨にカサなんか用意してるはずもなく、制服が塗れて色濃くなって重さが増す。
水たまりを蹴りながらバス停にむかって、我先にバスに乗ろうとする人たちに流されるようにバスに乗った。
ぎゅうぎゅう押しあう乗客たちをすり抜けて開いている席に座る。
塗れた髪をかきあげて、身体にはりつく制服の袖をしぼった。
まったく嫌な天気だ。
ふくれっ面をしながら移り変わる景色をみて、バスが止まるのを待った。