天使になれなかった。


新築マンションのモデルルームみたい。
それが感想。

高い天井の空間に、ほとんど手つかずのような傷ひとつないセンスの良い家具が適度におかれている。

ただっぴろいリビングにとおされたあたしは、ソファに座って手渡されたタオルで髪を拭いた。

高級スウィートルームで深い眠りにつけるのに、少し大きめの住居に落ち着かない。

あたしたちは、数々の作戦を実行してきた仲ではあるがお互いのプライベートを晒したことはまったくといっていいほど無いのだ。

言えば、凛羽のたてた作戦のクセは知っているけれど凛羽の家族構成や生活はまったく知らない。


だって必要のないことだから。

あたしたちはただ
的確な作戦を作り上げていかにうまく実行し、どれだけ権力のあるやつにどれだけ金をださせて、どの程度の価値のある情報を入手して、どれくらい世間に騒がれるか…が重要であって

そこにお互いの私生活は一切必要ない。

緊張するのは、あたしが今そんな凛羽の日常に少し足を踏み入れてしまったから。
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