天使になれなかった。
「手嶋さん!手嶋藍さん!」
突然の呼びかけに、立ち止まる。
振り返れば、同じクラスの男子がたっていた。
男子といっても彼はその辺にいる女子よりも綺麗で整った顔をしている。
その顔立ちと愛嬌のある性格で学校中から可愛がられているのだ。
そしてうちのクラスで最も地位の高いグループに所属していた。
「どこいくの?」
人なつっこい笑顔であたしの隣を歩く彼からは妖艶的なオーラが放たれている。
あたしは答えずに歩き続けた。
「てゆうか俺の名前知ってる?」
「……蓮見凛羽(ハスミ リウ)くんでしょ…?」
明らかにめんどくさそうな顔と声で答えた。
「覚えてくれてたんだ!手嶋さん、あんまクラスのひとらと喋らないから俺の名前なんか覚えてないと思ってた!」
一度聞いたら忘れるはずがない、こんな珍しい名前。