セ ン チ メ ン ト

「で、竜也来るって?」

「あと一時間待ってーだってさ」


涼子の声に、
返事をする。



ケータイには、
竜也からのメール。


たいしたメールじゃないけど、


それでも、
つながりの、証だった。




先輩方が、
一年前にぶっ壊したって言う

屋上の鍵。



二年生は代々、
そこに集まるのが通例らしい。



だからあたしたちも、
その通例にのっとって、



ここに、いる。




「ちょっと動かないでよ」

「だってくすぐったいんだもん!」


コンクリートの上に、
広げられたのは、


タマちゃんの、ネイルセット。


ピンクにしてね、
って、


可愛い声で言って、


可愛く笑ったニナちゃん。



「はいはい」

って返事をしたタマちゃんは


嬉しそうだった。




ニナちゃんに
何かを言われても


大抵の子は


笑ってしまう。




ニナちゃんは
だいたい、

人を傷つけることは言わないし、

言われても、

その相手のことを悪く言わない。



そういうところが
"ゆるい"んだって

タマちゃんは、


ニナちゃんのお姉さんみたいな顔をして


いつだったか言っていた。




ニナちゃんの爪の先に、
白い花がのせられていく。



「今度はね、
 あたしね、
 生まれ変わったら、
 タマみたいな美人に生まれて、

 自分でやるね?」




ニナちゃんは、
生まれ変わっていく爪を見て、


そんなことを言った。


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