セ ン チ メ ン ト


ジャアアアア―…


パパが自分の部屋から出ていって、
それからすぐに、


あたしはシャワーを浴びに、
一階まで降りた。



カナコカナコカナコ。



パパの呼ぶ名前は、
あたしじゃない。



せめて、
あたしの名前だったら良かったのかも。


そうすれば、
少しくらいは、


救われたのかも、しれないのに。



だけど、
その名前は、

あたしじゃあ、ない。



死んだ、ママの名前。



シャワーが、
やたらと熱い。



ひっく、と
しゃくり上げて泣くことが、

馬鹿馬鹿しい。


なのに、涙は流れていく。




バスタブの側、
置きっぱなしのカミソリ。



あたしは、

いつものようにそれを握りしめて、




手首に押し当てて、




―引っ張った。




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