運命なんて信じない。
(あたし……どうしちゃったんだろ……?)
サリが首を傾げていると、彼が近づいて来ました。
一歩、また一歩と歩く度に水の跳ねる音が聞こえます。
近くでまじまじと見ると、彼は驚く程整った顔をしていました。
所々ツンツンと跳ねた白いけど艶やかな髪。右に流れた前髪。
瞳は赤黒く、少し大きめ。薄い唇に通った鼻筋。
耳には幾つかのシルバーピアス。
歳は思ったより若く、大体サリと同じくらいのようです。
顔には人懐っこい笑顔を浮かべています。
鍵を指で回しながら彼は言いました。
「ダイジョブか?」
そう言うと、檻の鍵穴に鍵を突っ込み回します。
カチャリと鍵穴が鳴って、檻の鍵が開きました。
サリは、ふと周りにいた奴隷の顔を見回してみます。
すると、先程は全員が「死んでいる目」をしていたのに、今はもうそんな物見る影もありません。
驚き半分、喜び半分といった所でしょうか。
キィ―――……
扉を開けて、檻の中に入ってきた少年は、1人ずつ順番に手錠と足の鉄球を外していきました。