運命なんて信じない。


自由の身になった“元”奴隷達は、涙を流して喜んだり、少年にお礼を言ったりしてから急いで逃げていきました。


最後の1人はサリです。

今言わないと、お礼を言うタイミングを逃すと思った彼女は、彼に話し掛けました。


「あ、りがとう……。あの…強いんだね、君」


何を話していいのか分からず、無難なネタをチョイスします。


「いんや。コイツらが特別弱いんだよ。武器持ってるし人数も多いからって、油断しまくり―――お、開いた」


そう言うと、手錠と鉄球を外してくれました。

そして、サリの格好を見て眉間にシワを作り、


「……アンタ、寒くねぇの?」


と、一言。


サリは、言われた事の内容が一瞬把握できませんでした。


奴隷として仕えてる時に、こうやって寒さの心配をされた事なんて無かったからです。


奴隷は、主人より暑くて当たり前。

奴隷は、主人より寒くて当たり前。


ずっとそういうルールの中で暮らしていたサリにとって、その言葉は余りにも意外で……心を暖かくするものでした。


(奴隷になってから、心配してくれる人なんていなかったもんね)


サリが黙りこくっていると、少年は何を勘違いしたのか、


「ほら、さみーんじゃねーか。……コレやるよ。無いよりはマシだろ」


こう言って、するりと自分の巻いていたマフラーを解き、サリの首に巻き付けました。


サリは慌てて断ろうとしましたが、少し寒いのは事実だったし、彼のマフラーの温かさが心地よくて、暫くこうしていたかったので止めました。


マフラーからは、微かに砂糖のような甘い匂いがします。


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