運命なんて信じない。
ウェンズが、初めて口を挟みました。
サリは思わずビクッと肩を震わせます。
(やっぱ怒っちゃったんだ……。当たり前だよね、折角助けてくれたのに、こんな事言われたら………)
彼は、サリの頭にポンと優しく手を置き、少し腰を屈めて顔を覗き込みました。
そして、真剣な目で言います。
「俺、最初に言ったろ?アンタに“自由”をあげようかって。今更嘘ついてアンタを売り飛ばす気なんてさらさら無ェよ」
「……………」
サリは、ただ彼の目を見ている事しかできません。
彼は、表情を少し崩して、悲しげに微笑み、続けました。
「俺は、今までアンタがどう過ごして来たか知らねぇ。だから、安易に慰める権利なんてモンも無ぇ。……でも、見返りなんか無くたって、人を助けるバカはいるよ。例えばここに」
ひとしきり話し終わってから「あー、何語ってんだよ俺。クサ―――」と苦笑しています。
気まずそうに笑っているウェンズを見ながら、サリは思いました。
――この人なら、友達になれるかも。
と。
彼女は、奴隷になってから友達と呼べる存在の人ができなかったのです。
仲良くなっても、屋敷が賊に襲われて、また攫われ離れ離れになってしまいます。
こんな世界だから、自分の主人がいつ賊に襲われてもおかしく無いのです。