運命なんて信じない。
「まぁ、強いて理由を言うなら、アンタが昔の―――……」
ウェンズは、そこまで言って、口を閉じます。
「?」
サリが黙って続きを待っていると、
「……いや、何でもない。
それより俺、アンタの『まだ自由じゃない』って方が気になるんだけどな――」
ニッと笑った彼にあからさまに話題を逸らされました。
途中で会話を止められると、人間誰でも続きが気になります。
サリが文句を言おうと口を開けようとした、その時―――
「…う、うぅ………」
賊の頭が目を覚ましました。
頭は、ゆっくり起き上がると、周りに倒れている自分の部下達を見て―――
「………テ、メェ……俺の可愛い子分達に何しやがったあああああぁぁぁぁ!!!!」
顔を真っ赤にして、目を大きく見開き、ギリギリと歯を食い縛っています。
(い、や……怖い……!!!)
彼の顔は、サリが奴隷時代に男にされた酷い事を思い出させるには十分でした。
サリはそこから一歩も動けません。
目を少し細めたウェンズが、相手を落ち着ける静かな声で言いました。
「安心しろよ、傷は浅い。つーかもう血ぃ止まってんじゃねーの?」
「黙れぇッ!!!!」
頭に血が上った彼に、ウェンズの言葉が届く筈が無く。
賊の頭は、近くに落ちている短剣を拾うと、奇声を発しながらウェンズに飛び掛かりました。