運命なんて信じない。
ウェンズは、小さく溜め息を吐くと、
「アンタ、襲い掛かるとき声上げる癖直した方がいいよ」
と呟くと、サリを小脇に抱えました。
「え、わ、ちょっと?」
「逃げるぞ――。めんどい」
サリの問いに短く答え、彼は強く地面を蹴りました。
「うわッ」
見る間に賊との間が離れてゆきます。
サリにはやっぱり気になる事がありました。
サリは走っているウェンズに訊ねます。
「ねぇ、何でさっき逃げたの?」
抱えられた格好で上を向いて彼の顔を見ると、彼はニッと笑いながら、
「だってアイツ、これ以上殴ったら脳内出血で死ぬぞ?ただでさえアイツ倒れる時、頭打ってたんだから――」
と言いました。
――ウェンズらしいな。
気が付くと、もう雨は止み、西に傾いた太陽が雲の切れ目から見えていました。