運命なんて信じない。
2人は宿屋を出ると、パン屋を探しました。
しかし、パン屋は今日臨時休業で閉まっています。
2人は、仕方なく酒場へ行って食べ物を買う事にしました。
「……ックシュン!!!」
ウェンズは、さっきからくしゃみを連発しています。
「寒いの?」
サリの問い掛けに彼は頷いて言いました。
「俺、体温高いけど逃げ易いの。だからいつもはローブとか着てるんだけど、流石に今着ると無駄に目立つだろ?……ックシュン!!!」
(いや、君の容姿と髪の色、十分目立ってるよ。ついでに目の色も)
サリは敢えて突っ込みません。
小さな村だったので、もう酒場の前まで来ました。
木で出来た扉は、店内が見えるように上と下が開いていてドアノブが無く、押して入るタイプです。
サリは一瞬入るのに躊躇しました。
中には、ガラの悪そうな人達が沢山いたからです。
そんなサリに、ウェンズはニッと笑って言いました。
「ダイジョブだって。いざとなったら力ずくでねじ伏せる」
随分物騒な発言です。
けれども、昼間、彼の強さを十二分に見せ付けられたサリにとっては、それ以上安心できる言葉はありません。
「ん。そうだね」
小さく頷いて、彼に続き、酒場に入って行きました。