運命なんて信じない。


酒場に入った途端、ムアッと来る酒の臭いと、店に詰め込まれた客達の熱気に、サリは思わず顔をしかめてしまいました。


それと同時に強い不安感に襲われて、ぎゅっとマフラーの端を握ります。


すると、不安だった気持ちが、少しマシになりました。


「おい、ねーちゃん可愛いなぁ。ちょっとコッチ来ておじさんのお酌してくれよ〜〜」


不意に、ガタイの良い、泥棒髭にタンクトップの男に声を掛けられました。


サリが、怯えた顔をしてビクッと肩を揺らします。


(お酒……男の、人………嫌、怖い!!!)


サリがその場から動けなくなっていると、隣で、眉間にシワを刻んだウェンズの

「この時期にタンクトップかよ……。寒くねぇのかな、あのオッサン」


という、微妙に的を外した発言が聞こえて、少し不安な気持ちが軽くなりました。


本人は、きっと物凄く真面目に思ったのだと想いますが……


天然って恐ろしい。


「まだ10月だよ。ウェンズが特別寒がりなだけじゃん」


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