運命なんて信じない。
鈍い音が人々の鼓膜を震わせ、男が声にならない悲鳴を上げました。
更にウェンズは男の頭をガッと鷲掴みにすると、ギリギリギリと音が鳴るくらい強く握り締めます。
部屋は、客の怒号と喚声と口笛でぐちゃぐちゃです。
ウェンズが男の頭を掴んでいる方の腕を天井に掲げると、90キロはありそうな男の体がふわり、と浮きました。
部屋の喚声が一層大きくなります。
ウェンズは端正な顔を歪め、泡を吹き今にも気絶しそうな男に向かって、低い声で言いました。
「ガキだからってナメんじゃねーよ、雑魚」
彼が手を放すと、男は糸が切れたように床に倒れました。
その途端、
「にーちゃん強ぇな!!」
「見直したぜアンタ!!!」
「どーやったらそんな細っこい体からあんな力が出るんだ?」
ウェンズは部屋中の人間から声をかけられましたが、彼はどの人にも
「ん――?そんな事無ェよ――」
と曖昧な答えしか返しません。
彼は椅子に座ってからも、パンを齧りながら質問をしてくる相手を巧く受け流し続けています。
ようやく質問の嵐が収まってから、彼はサリに言いました。