運命なんて信じない。
ビュウウウゥゥゥッ!!!
室内にも関わらず吹いた強い風に、サリは咄嗟に顔を腕で庇います。
ようやく風が収まって、彼女が目を開けると―――……
そこには、少年が立っていました。
通った鼻筋も、薄い唇も、大きめの目も。
その驚く程整った顔の造りは、間違いなく彼の物なのに。
彼の白い髪は、艶やかな銀髪に。
赤黒かった瞳は、血を零したように紅く。
こっちを振り向く姿は、憂いを帯びていて………
「ウェン、ズ?」
サリは無意識のうちに彼の名前を呼んでいました。
いつの間にか、店内はシンと静まり返っています。
当たり前です。
この世界で“死神の伝説”は、誰もが小さい頃聞かされる……例えるならば、「桃太郎」か「白雪姫」みたいな物なのです。
その伝説中の人物の子孫が居るとなったら、みんな口をぽかんと開け、何も喋れなくもなります。
そんな静寂を破ったのは、ある男の声でした。