運命なんて信じない。


しかし、サリはウェンズを刺そうとしません。


目を見開き、傷ついた表情のまま呆然とするサリ。


何故か、その顔を見たウェンズまでまだ刺されていない心臓がキリキリと痛みました。



その痛みを誤魔化すように彼は声を荒げます。


「……ッ、さっさと刺せよ!!!!」


ビクッと震えた彼女の肩。

遂に彼女の涙腺は決壊し、ボロボロと光る透明な滴が頬を伝って落ちてゆきます。


更に痛みを増す胸部の痛み。


ウェンズは目を細め、眉を吊り上げサリを睨み付けました。



「アンタは護りたくないのか? この世界を……アンタの大事な人達を……!!

俺を今ここで刺し殺せば、みーんな助かんだ。アンタは……そのチャンスを無駄にすんのか!!?
大事な奴らを護りたくねぇのか!!!!」



ウェンズには、サリの大事な人がどんな人達かも分かりません。


そもそも、大事な人がいるのかどうかも不確かで当てずっぽうでした。


けれど、その予想は見事に当たり……サリの頭の中には、故郷の大好きな仲間達の顔が浮かびます。



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