運命なんて信じない。
仲間の事を思い出した途端、サリの頭は真っ白になります。
(…みんなが、死んじゃう……?
そんなの……)
「そんなの……嫌ぁぁぁ――――!!!!」
無意識のうちにそう叫んでいて。
気付いたら、ウェンズの方にナイフを構えたまま走っていて。
彼はそんなサリを、避けるでも無く、返り討ちにするでも無く………ただ、眉尻を下げ気味にして寂しそうに微笑んだだけでした。
「……!!」
その微笑みを見た時、サリの脳内にウェンズの人懐っこい笑顔が浮かび、思わず走るスピードが落ちます。
それでも、人間そんなに急に止まる事は出来ません。
そして。
手に持っていた鋭い刃物は、ズプッという柔らかいモノを切り裂く感覚を手に残して彼の左腹部に突き刺さります。
と同時に、生暖かく鉄臭い液体が顔や服に付きました。
ウェンズが僅かに顔を歪めます。
「え……あ、ウェ、ンズ……?」
サリは、自分のしてしまった事が信じられませんでした。自分の腕に付いた血液をまじまじと眺めていると、だんだん手が震えてくるのが分かります。
ウェンズは、震えているサリを見るとニッと笑いながら言いました。
「ざーんねーん。俺は死にませんでした―――。てゆーかアンタ真面目にやってる?腹ぁこんなちょこっと刺しただけだったら、普通の人間だって生きてるっつーの」
そう言うと、まだ腹に刺さっているナイフを持っているサリの手を掴み、思いっきり外側に向かってに引っ張ります。
グチャリという生々しい音と共に、彼の身体からさっきより大量の血が溢れだしました。