運命なんて信じない。


その途端、少年の周りが真っ暗になりました。民家も、山も、空さえ無くなり……ただ自分を囲むように鉄格子がたたずんでいるだけです。

身体を見ると、手のシルバープレートが付いたブレスレットとマフラー以外は全て変わっていました。


腕にはがっちりとした手錠。
足は裸足で枷が付けてあり、枷から伸びた鎖は床と繋がっていました。
鎖骨が覗いている白い七分丈のTシャツは擦り切れていて血が滲んでいます。


けれど少年が一番驚いたのは、鉄格子に反射した自分の顔でした。



――ちっさい………?



今より少し大きな目、相変わらず通った鼻筋、子供らしさを感じない死んだ瞳………
少年は、10歳前後の幼い顔になっていました。


少年が戸惑っていると、どこからか声が聞こえました。


「思い出せない?ウェンズ自身の過去なのに?」


「……っ、誰だよ、アンタ」


少年の声は今ほど割れてはいませんでした。声の主はあははと笑います。


「あたしだよ、分かんない?サリだよ」


いつの間にか、背後にさっきの金髪の少女が微笑んで立っていました。


少女は、いつもだったら考えられない程饒舌に喋り出しました。


「貴方、あたしと過去の自分自身を重ねてたでしょ?境遇が似てるとでも思ってたんでしょ?」


少年は何も言い返す事ができません。その通りだったからです。

そんな彼を尻目に、少女は続けます。


「孤独から逃れられると思ったんでしょ? あたしに語った死神を庇う言葉は、全部自分に言い聞かせてたんだろ? そうやってオレの親父の事だって、自分の所為じゃないって自分自身に語ってたんだろ?」


少年は、少女の口調が変わって来ている事に気が付きました。


少女を見ると、彼女は顔をみせないように俯いています。


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