運命なんて信じない。
「……何………を………」
少年は何か言おうと口を開けますが、喉に声が突っ掛かって出て来ません。
彼の胸に再び鋭い痛みが戻って来ました。少年は苦しそうに顔を歪め、血の滲んだシャツの胸部をぎゅっと掴みます。
(……クソッ、思い出すな……忘れろ、忘れろ、忘れろ!!!)
「忘れるな」
少年に追い討ちをかけるように、少女は俯いたまま冷たい声で言い放ちます。
「お前は、生まれない方が良かったんだ。そこに存在が在るだけで周りの人達が傷ついてく。村のみんなが良い例だろ?
お前は……死神は、死んだ方が良いんだよ!!!!」
「―――ッ!!!!」
少年はギリッと歯軋りをして耳を塞ぐように頭を抱え込みました。目をキツく瞑って何も見ないようにします。彼の額には汗が滲み、頭を一定のリズムで鉄槌で殴られたような頭痛が襲っていました。
「……や…めろ………ッ」
「やめないね」
少女はさらっと彼の要望を受け流します。
少年は気付いていました。
今、ここで喋っている少女は“サリ”ではないという事を。
「アンタ……誰……だ」
絞りだしたような声で問い掛けます。ところが、少女はその質問さえも無視しました。
「この女とも、かつてのオレ達と同じ関係になれるとでも思ったのか?」
少年が顔を上げ少女を見た瞬間、彼女の顔がグチャッと歪み変形を始めます。
「“仲間”って呼んでもらえるとでも思ったのかッ!!!?」
「!!!?」
少年は目を大きく見開く事しかできません。
少女の身長が縮み、顔も無事変形を終え―――……そこに立っていたのは、10歳前後の少年でした。
茶色のスポーツ刈りに目尻の上がった目。大きめの口。
茶色い瞳は憎悪の感情に染まっています。
「……アレックス………!!!」