運命なんて信じない。
「ッ!!!」
ウェンズは、弾かれたようにベッドから起き上がりました。
心なしかとっくの昔に治ったはずの右肩から腰の傷痕がズキズキと熱を発しています。
「………っ、夢か……」
ウェンズは左手で顔の左半分を覆い、大きな溜め息を吐きました。
汗でぐっしょり濡れた服が不快感を募らせます。
彼は喉もカラカラでした。
『 そうやってオレの親父の事だって、自分の所為じゃないって自分自身に語ってたんだろ?』
『そこに存在が在るだけで周りの人達が傷ついてく。村のみんなが良い例だろ?』
『“仲間”って呼んでもらえるとでも思ったのかッ!!!?』
「……俺の所為、か………」
頭の中に、つい今しがた夢で言われた言葉が反響します。
(……俺はいつの間にか……アイツに自分だけじゃなくて、アレックスの事まで重ねてたんだな――――)
――アイツの死んだ目を見たとき、他の奴には無い……何か親近感みたいなのを感じたのは確かだった。
――酒場で絡まれた時、俺に真っ先に助けを求めてきたの、不謹慎かもしれないけど……本当は少し嬉しかったんだ。
――「一緒にいても良いのかな」って。死神として覚醒してから一度も無かった“俺の居場所”をくれたのかなって、勝手に思い込んでた。
――だからか?
――アイツとアレックスを重ねて。“仲間”なんて呼んで貰った事も無いのにそんなつもりになって。俺を殺すって言われて、勝手に裏切られた気分になって…………
――そんで、キレた?
――あー、俺最低。
――アイツにまでアレックスと同じ事させること無かったのにな………
『お前は……死神は、死んだ方が良いんだよ!!!!』
「……ははっ、確かにな――…」
ウェンズは自嘲気味に笑います。
夢の中で滲んでいたはずの涙は、現実ではやっぱり枯れたままでした。