運命なんて信じない。
ボフンと音を立てて再びベッドに倒れこみます。
「起きましたか?」
不意に低い声で呼びかけられ、ウェンズはちらりと声のした方を見ました。
赤い長髪を後ろで一本に結んでいる黒い縁の眼鏡をかけた青年が、木の椅子に座ってこちらを見ています。
(誰だよ、こいつ……)
その時、やっと彼は気が付きました。
自分が……見知らぬ部屋に、見知らぬ人物と一緒にいる事を。
酒場よりはマシだけど、少しくすんだ白い壁。
戸棚に入った色々な薬品の数々。
木製の四角いデスクには羊皮紙や分厚い本、羽根ペンが散乱しています。
「……何処だよ、ここ」
「君、昨日立ったまま寝て、地面に倒れたんですよ」