運命なんて信じない。
今にも崩れてしまいそうな屋根の上に、紅いマフラーに黒いローブを纏った白髪の人物が、片膝を立てて座っていました。
(誰だろう……白髪?お爺さんかな?)
マフラーで顔がよく見えません。
すると突然、屋根に座っている人物がニッと笑って、マフラーの端から口角が見えました。
「アンタに“自由”をあげようか?」
「えっ……」
少し割れたハスキーな声。
とてもでないけれど、お爺さんの声には聞こえません。
しかし、サリがそれよりも驚いたのは………
「自由を、くれるの……?」
彼が言った言葉でした。
少女の瞳に、微かに希望の光が宿ります。
彼は小さく頷いてから、すっくと立ち上がり―――屋根を思い切り蹴って、宙に舞い上がりました。