運命なんて信じない。
時は数時間前、昨晩……ウェンズが倒れた直後へと遡ります。
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サリは勢いよく背後に立つ人物を振り返りました。
目算180センチオーバーの高い身長。
細くて長い手足。赤色の髪は肩に付くかどうかの長さまであり、黒い縁の眼鏡をかけています。
顔は逆光で見えません。
カッターシャツに黒いセーターというラフな格好の彼は、ウェンズの傍にしゃがむと頸動脈に手を当てました。
「…え、何を……」
サリは戸惑いを隠せません。
「……運びますよ」
「はいっ?」
赤髪の青年は低い声でボソッと呟くと、いきなりウェンズを担ぎ上げました。
「え、ちょっと!!!」
青年の言葉を見事に聞き逃したサリは、彼がウェンズを運ぶことに驚き、慌てました。