運命なんて信じない。
(……ウェンズが…連れて行かれちゃう!!!)
サリは青年のセーターを、これでもかと言うくらい引っ張ります。
青年は目を見開いて一瞬サリを見ましたが、すぐ前を向き直すと彼女に言いました。
「安心してください。彼は寝ているだけです」
「……はい?」
(いや、そっちの心配じゃなくて……って寝てるのコレ?
何で? 何であのタイミングで寝るの?)
取り敢えず彼が死んでいるという心配は無くなったけれど、まだこの青年がいい人だという保証はありません。ウェンズが引き渡されたら、サリは彼を助けるすべを持っていないのです。
サリは鼻声で青年に言いました。
「この人は……あたしの命の恩人なんです!! お願いします、この人を引き渡さないでください!!!」