運命なんて信じない。
こちらは、ちょうど今サリ達が出ていった部屋です。
しゃがみ込んだジンが、ベッドに座っているウェンズを拘束している縄を解いていました。
シュルシュルという縄を解く音が、静寂の所為でいつもより大きく聞こえます。
何の前触れも無くジンがウェンズに聞きました。
「……副作用は、大丈夫なのですか」
歴史オタクの状態とは違う、低く落ち着いた声です。
「何が―――?」
ウェンズはまたヘラッと笑ってシラを切ります。
が、ジンは縄を解く手は止めず、さっきより少し大きな声で言いました。
「とぼけないで下さい。今、僕は貴方を1人の医者の立場で見ています。
死神の力は、かつて文明を崩壊させるのに大きく関わったと伝えられる程、大きな力です。
そんな力を、外部からの力で無理やり身体に押し込めたら………貴方の身体への負荷は、我々の想像を遥かに超えるはず」
ジンの喋り方には、淡々とした中に温かいモノが込められています。
ウェンズには、それがジンの優しさだと分かっていました。
だからこそ。
ウェンズは今日も、嘘を吐きます。