運命なんて信じない。
「ここには、いつまで滞在なさるおつもりで?」
ウェンズはジンの何気ない問いに、現実へ引き戻されます。
弾かれるようにジンを見ると、彼は部屋を出ようとドアを半開きにさせた状態のまま、塵取り片手にこちらを振り返っていました。
ウェンズは、ちょっと考えるそぶりをしてから、ニッと笑って答えます。
「そうだな……もう傷は半分くらい塞がってるから、様子を見る為にも明後日まではいるかな―――?」
その笑顔に隠された想いに気付く事が出来なかったジンは、にっこり微笑んで「ごゆっくりどうぞ」と言うと、扉を閉めて出ていきました。
バタンという音がいやに響きます。
ウェンズはそっと立ち上がると、音を立てないように気を配りながら少ない荷物を纏め始めました。
大きめの巾着袋のような袋に自分の血がべっとり付着したカーディガンを突っ込んだ時、カーディガンのポケットから小さな袋がズルリと滑り落ちます。
袋は床に落ち、固そうな音を立て……中から幾つかの砂糖を焦がして作った薄茶色の飴を出しました。