涙。
お父さんに会ったら、私のこの手をお父さんに包んでもらいたかった。

温めてほしかった。

でも―。

お父さんの手は、もう塞がっていた。

その姿が今でも忘れられない。

人込みにかき消されるように小さくなってゆく父親の背中。

親子のはずなのに遠い存在のように感じた。


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