止まない雨




「そういえば、告白してくれた時もこうやって抱き締めてくれたっけな…」

「そうだっけ」

少しだけ照れ臭くて返信を濁らせた。本当はちゃんと覚える。あの日の雲の形も、飛んでいた鳥の数も全部全部一つも忘れることなく。これからも忘れることはないだろう。
彼女はふと哀しげに微笑むと『そろそろ時間だ』と僕の腕から抜け傘から出た。でも濡れることなく雨は彼女をすり抜けていく。



「いつまでも私は愛してるぞ。お前が私の所に来た時は未来の妻やら子供との幸せな話しを楽しみに待ってる、またな…」


小さくなった声はやがて聞こえなくなり、僕と真っ赤な傘だけが取り残された。傘をたたむと土砂降りの雨に身を濡らす。
両頬を伝う涙は、いつまでも止まることはなかった。


「………僕も、愛してるよ……ちゃんと、聞こえたかな?」








END
→あとがき
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