開かない窓
俺達は葬儀会場に向かった。その間、誰1人として口を開かなかった。

晃のおばさんが参列者1人1人に丁寧にお辞儀をしていた。


「おばさん……」

「あら、優一くん…来てくれたのね。後ろの方は…お友達?来てくれてありがとうね」

「はい…」

恰幅がよく、常に笑顔を絶やさないおばさんの顔は、すっかりやつれ果て、表情がなかった。
もう、涙も枯れてしまったのだろう。


棺の視蓋をゆっくり開けた。
カサブランカのきつい匂いが鼻孔をくすぐる。
棺一杯に敷き詰められた献花の中に晃が眠っていた。

は、綺麗だった。


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