開かない窓
「図星かよ・・・・・悪いが、答える気はない。もう忘れたいんだよ。」
その声には苦渋が滲んでいる。俺が想像している以上の事を見たのだろう・・・・

「でも、貴方しか解らない事なんです・・・・なんとか思い出してもらえませんか?」
俺は諦めきれずに、もう一度聞いてみた。すると彼は少し俯いて、囁きに近いくらいの声で呟いた。

「思い出せ?・・・・・はっ、どいつもこいつも自分の事しか考えてないんだな。」

「え?」
空耳だろうか、いきなり、月岡さんの口調が変わったような気がした・・・・が、その声はあまりにも小さく、内容までは理解できなかった。

「すみません、今なんて・・・・」そう聞こうとしたが、月岡さんはそれを不自然なまでの笑顔で遮った。

「ああ、ごめんごめん。どんなだったか・・・・だよね?確か首が変な方向に曲がって、眼球と舌がボロッと出てたなぁ。」

ニコニコと貼り付いた笑顔のまま、どこか機械的に話す月岡さんに、俺は言葉が出なかった・・・・・。それを知ってか知らずか、彼は笑顔で話を続けた。

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