開かない窓
「先輩、部室に向かってましたよぉ~」

「部室?陸上部ってこんな時でも活動するのか?」

「普通しないと思いますけどぉ~でも・・・先輩の中では部長さん生きてますから。」

「はあ!?」
(こいつ今なんつった!?)
綾人の言葉に俺達は目を丸くした。

「だからぁ、部長さん生きてるんですって~」

「も~そんな訳ないでしょ。・・・月岡先輩は死んだのよ?解りきった嘘をつくのはやめようね?」

頼が満面の笑みを浮かべ、小さい子をあやすかのような口調で綾人の発言を否定する。誰が見ても馬鹿にしきっているようだ。
その場違いな笑顔をみて、俺は内心寒気がした。

(この女、前から思ってたが人間の皮かぶった鬼か悪魔なんじゃないか?)

ところが、それに対する彼はそれを全く意に介す事無く俺の方を向き、眠そうな口調で告げた。

「会えば解りますよぉ~・・・じゃボク、眠いんで失礼します~」

「あ、おい!!」
慌てて呼び止めたが、彼は振り返る事なく俺達の前からフラフラと危うげな足取りで立ち去っていった。
< 141 / 191 >

この作品をシェア

pagetop