開かない窓
彼は、自分のロッカーの前で外れた鼻歌を歌いながら、スポーツバックからテーピング用のテープを取り出している所だった。

後ろを向いているので、彼は俺に全く気付いていなかった。そこで、とりあえずは声をかけてみることにした。

「蓮・・・。」

自分の名前を呼ばれた事に気付いた彼は振り向くと、すぐに嬉しそうな声をあげた。

「お、優一じゃん~!どーした?」

「いや・・・・・・」

「俺は、これから部活なんだ。あんま話せないけど・・・ま、ゆっくりしてけよ!」
蓮は恐ろしいまでに普段通りだった。

部活って…こんな時でもやるのか?この反応に少し、いや、かなり戸惑ってしまった俺はそれ以上何も言うことができず、ただ彼の行動を黙ってみているしかなかった。

蓮は、今からジャージに着替える所なのか制服姿のままだった。活動用のジャージや愛用シューズが投げ出されている。その割に、彼の大きめのスポーツバックはなぜかパンパンに膨れていた。

(何をあんなに入れてんだ??)

そう思いながらも引き続き蓮を見ていると、あまりにその行動が普段通りなので、自分も夢と現実を取り間違えそうになる。
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