開かない窓
俺は、それが叶わぬ願いと知りながら「へぇ~」と曖昧な相槌を入れるしかなかった。
そんな事はまったくお構いなしに、彼は自分が外したカモフラージュの床板を手に取ると、裏返しにしたり、何かを調べ始めた。


ひとしきり見終わると、彼はそっと壁にその板を立てかけた。


「・・・・・・これは」

彼の口調は明らかに何かに驚いていた。

「何か解ったんですか?」

「ごく最近、この通路を誰かが使ったようだ」

「え・・・・・・?」

「板に仕込んでおいたネジが無くなっている。誰かがこれを外したみたいだな・・・・・・とりあえず、中に入るぞ」
そう言い捨てると、長身を屈めてさっさとその穴に入ってしまった。

「あ、待って・・・・・・」

と言っても彼が俺を待っててくれる可能性はほとんどなさそうなので、慌ててその後を追いかけて行った。
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