開かない窓

供物

ぷはっ!

俺は水泳で息継ぎをするように思い切り外の空気を肺一杯に吸い込んだ。こんな都会の汚れた空気がここまで恋しくと感じたのは最初で最後だろうな、と思いながら。

落ち着いて、ようやく辺りを見回すとすこし離れてはいるが、思ったとおり前方に今朝よりは人数が減っているものの、まだ警官が何人か残っている・・・・・・。

俺達は出来るだけ低く身を屈めつつ、建物の合間をぬって移動する事にした。
移動の際、俺は歩きながら地面に妙な違和感を感じた。

(何か重たいものを引きずっていったみたいだな。)

解りにくいが、よく見ると芝生の草がぺしゃっと潰されていて、何かの道みたいに見える。

もう少しそれを詳しく調べてみたかったが、いかんせん警察の目があるので、この事を憶えておくだけに留めた。

俺達は何も言わずにそっと旧校舎の裏に回ると、近くの茂みに身を潜めた。そこは日が当たらない割には湿気がほとんど感じられず、そこに不快感は微塵もなかった。
むしろ、この真夏日に涼むのにはもってこいの場所だと思う。俺は思わず溜め息をついた。

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