開かない窓
「こんな所初めて来ました。」

「涼夜が教えてくれたんだ。この場所に来ると落ち着くって。よく現実逃避に使ってた。…疲れてたんだろ、色々さ」


遠い目をしながら口にされたそれは、亡くなった彼に向けた言葉とゆうよりも、自分に向けて言っているかの様な台詞だった。
神条さんはゆっくり立ち上がって服についたホコリを軽く払いながら、その辺に転がっている石を適当にいくつか拾い、小さい円を描くようにそれを置き始めた。

「こんなもんか・・・・・・」

彼はその前で少しの間黙祷すると、ポケットからまだ封の切ってないタバコを取り出し、その中から1本だけ抜き取ると口に咥え、残りはケースに入れたまま先ほど石で作った円の中に置いた。

そのタバコは、昨日月岡さんが吸っていたものと同じ銘柄だった。
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