開かない窓
「笑うな!くっそ・・・・・・不味い・・・野郎、よくも平気な顔して吸えたもんだな・・・」
首を押さえて咳き込みながら、まだ何かぶつくさと言っている。

そんな彼を見て再度笑いがこみ上げてきたけど、これ以上笑うのは危険だと本能的に察知したので、服に付いた砂を払うフリをしながら立ち上り、何とか笑いを噛み殺していた。

と、その時、唐突に彼が呟きを漏らした。


「なんで、殺されなくちゃいけなかったんだ。」
まるで彼らしくない、思いつめた様なその声に俺は浅く息を飲んだ。

「北条ってヤツと涼夜の死は関連があるはずだ・・・・・・誰が、何のために涼夜を殺したのか・・・・・俺はどうしても真相が知りたい。お前もそうだろ?」

神条さんは墓標から目を外し、微かに笑いながら俺に問いかけた。無理に持ち上げているのか口角が微かに震えていた。

俺はそんな彼の問いに答えることが出来なかった。

一点の曇りもない目で墓標を見つめる彼に、かけられる言葉なんてある訳がなかった。それと同時に俺は、ようやく彼本来の姿をかいま見たような気がしたのである。

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